リーガルチェック
調査日: 2026-02-25
結論
tanomu-aiを作ること自体を禁止する法規制はない。ただし設計判断を間違えると違法になるポイントがあり、利用規約・決済設計・UI設計で守る必要がある。
設計原則: 「tanomu-aiは場を提供するだけ。契約は依頼者と受注者の間。受注者は自由意志で動く。」
サービス構造の法的整理
依頼者(AIエージェント利用者) ↓ タスク投稿(API経由) tanomu-ai(仲介プラットフォーム) ↓ マッチング・通知受注者(個人・フリーランス) ↓ 作業実行・完了報告 tanomu-ai(代理受領・報酬支払い)- tanomu-aiは業務委託の仲介であり、雇用のあっせん(職業紹介)ではない
- 依頼者と受注者の間で業務委託契約が成立する
- tanomu-aiは仲介手数料を取る
セーフな設計 vs アウトになる設計
| 論点 | セーフな設計 | アウトになる設計 |
|---|---|---|
| 労働者性 | 成果物納品型、受注者が自由に選択・拒否可能 | AIが作業手順を細かく指示、報酬固定、タスク拒否不可 |
| 中間搾取(労基法6条) | 業務委託の「場の提供」として手数料を取る | 雇用関係に介入して手数料を取る |
| 資金決済 | 代理受領型+短期決済サイクル | 報酬を長期預かり(エスクロー型) |
| フリーランス新法 | 依頼者と受注者間の直接契約、tanomu-aiは仲介のみ | tanomu-aiが報酬額を決定、業務内容を指定 |
| 偽装請負 | タスク定義は事前に明確化、作業方法は受注者の裁量 | 依頼者がリアルタイムで受注者に指揮命令 |
関連法令と対応方針
1. 職業安定法・労働基準法・労働者派遣法
リスク: 受注者が「労働者」とみなされると、職業紹介許可や派遣事業許可が必要になる。労基法6条の中間搾取禁止にも抵触する。
対応方針:
- 業務委託契約であることを利用規約で明確化
- タスクは成果物(写真、配達完了等)の納品で完了とし、作業プロセスの指揮命令は行わない
- 受注者がタスクを自由に選択・拒否できる設計にする
条文(労基法6条): 「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」
2. フリーランス新法(2024年11月施行)
正式名称: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律
リスク: tanomu-aiが単なる仲介を超えて「特定業務委託事業者」とみなされると、取引条件明示義務・禁止行為規制が直接適用される。
対応方針:
- 業務委託契約は「依頼者と受注者の間」で成立する設計にする
- 報酬額・業務内容は依頼者が設定し、tanomu-aiは決定しない
- 仲介事業者としての義務(虚偽表示の禁止等)は遵守する
発注事業者(依頼者側)の義務:
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 取引条件の明示 | 業務内容、報酬額、支払期日、実施場所・方法を書面または電磁的方法で明示 |
| 報酬支払期日 | 成果物受領日から60日以内に支払い |
| 禁止行為 | 報酬の不当な減額、受領拒否、買いたたき |
→ tanomu-aiのAPI/UIで依頼者にこれらの明示を義務づける設計にすれば、プラットフォームとして依頼者の法令遵守を支援できる。
3. 取適法(改正下請法、2026年1月施行済み)
対応方針:
- 報酬支払いは60日以内に現預金化できる方法で行う(手形払い禁止)
- コスト高騰時の価格協議に応じる仕組みを用意する
4. 資金決済法(2025年改正、2026年6月頃施行予定)
リスク: 報酬の預かり方次第で「為替取引」に該当し、資金移動業登録(供託金1,000万円〜、金融庁監督)が必要になる。
対応方針:
- 代理受領型を採用: 利用規約に「受注者は、tanomu-aiが依頼者から支払われる代金を代理受領する権限を付与する」旨を明記
- 代金の長期滞留を避け、短期決済サイクルを維持
- 海外AIエージェントからの依頼を受ける場合はクロスボーダー収納代行に該当し登録必須になる可能性あり → MVP段階では国内限定が安全
エスクロー型の場合: 資金移動業登録が必要。登録要件は供託金1,000万円以上、金融庁監督、本人確認義務、1回100万円の送金上限。
5. 個人情報保護法
リスク: 位置情報の継続的取得は行動履歴となり、慎重な取り扱いが必要。
対応方針:
- プライバシーポリシーで位置情報の取得・利用目的・第三者提供を明示
- 位置情報取得の同意をUI上で取得
- タスク履歴・行動パターンの利用目的を明示
6. 景品表示法
リスク: 受注者募集の広告で「月○万円稼げる」等の表示は不当表示に該当するおそれ。
対応方針:
- 報酬額・タスク量・想定収入の表示は実績に基づく範囲にとどめる
- 「著しく優良/有利」と誤認させる表示を避ける
7. その他
| 論点 | 注意点 |
|---|---|
| 配達タスク | 有償で他人の荷物を運送する場合、貨物軽自動車運送事業の届出が受注者側に必要になる場合がある |
| 買い物代行 | 中古品売買の仲介は古物営業法に注意 |
| 特定商取引法 | 受注者向けにはクーリングオフ等の直接適用はないが、通信販売の表示義務に注意 |
最大のリスク: ギグワーカー労働者基準の見直し
厚労省が40年ぶりに労基法の「労働者」判断基準を見直す研究会を設置(2025年〜)。
検討中の方向性:
- 経済的依存性を判断基準に追加 → 受注者がtanomu-aiに収入を依存していると「労働者」認定リスク
- 交渉力格差の考慮 → AIが報酬額を一方的に設定する設計だと不利
- 立証責任の転換 → プラットフォーム側が「労働者ではない」ことを証明する責任を負う可能性
UberEats配達員・Amazonドライバーが既に団体交渉を申し入れている先例あり。この研究会の結論はtanomu-aiを含むギグワークプラットフォーム全体に波及する。
対策: 受注者が複数プラットフォームを自由に使え、タスクを自由に拒否でき、報酬交渉ができる仕組みにしておく。
MVP段階での優先対応
| 優先度 | 対応事項 | 関連法令 |
|---|---|---|
| 高 | 利用規約の整備(業務委託型の明確化、代理受領権限の明示) | 職業安定法、労基法、フリーランス新法、資金決済法 |
| 高 | 決済スキームの設計(代理受領型、短期決済サイクル) | 資金決済法 |
| 高 | タスク投稿APIで取引条件明示を強制する設計 | フリーランス新法 |
| 中 | プライバシーポリシー・位置情報の同意取得UI | 個人情報保護法 |
| 中 | 広告表示ガイドラインの策定 | 景表法 |
| 低 | 配達・運送タスクの法的整理 | 貨物自動車運送事業法 |
| 継続 | ギグワーカー労働者基準の研究会動向ウォッチ | 労基法改正 |
| 継続 | 資金決済法施行令・内閣府令の確定ウォッチ(2026年6月頃) | 資金決済法 |
免責
本ドキュメントはe-Gov法令APIの条文および公開情報に基づく論点整理であり、法的助言ではない。実際のサービス設計にあたっては弁護士への相談を推奨する。